インボイス制度のスタートについて、まだまだ先のことだと思っている方は多いのではないでしょうか。しかし、インボイス(適格請求書)を発行するには登録が必要なため、事前にチェックしておく必要があります。
そこで今回の記事では、以下の内容についてお伝えしていきます。
- 制度のスケジュールと登録期限
- 登録申請に必要な書類と手続き時のポイント
- 売手側として未登録にした場合のデメリット
- 事前に準備しておくべき点
「必要性に気づいた時には、もう期限が過ぎていた……」なんてことがないように、今からチェックしておきましょう。
インボイス制度の登録期限はいつまで?スケジュールをチェック
インボイス制度の登録申請受付は、既に行うことができます。そして制度開始と同時にインボイスを利用できる企業または個人としてスタートするには、期限内に登録を行わなくてはいけません。
失念することのないよう、今からしっかりと確認しておきましょう。
2023年10月から始めるには2023年3月までに登録が必要
制度開始の2023年(令和5年)10月1日からインボイスが利用可能な企業または個人としてスタートしたければ、2023年3月31日までに登録が必要です。
登録申請受付は2021年(令和3)年10月1日から始まっているので、準備ができればいつでも行うことができます。
なお、登録申請方法は「申請書の提出」と「e-Tax」の2通りあるので、提出を予定している場合は期限内に行うようにしましょう。
インボイス制度開始までのスケジュール
登録申請受付開始から、実際にインボイス制度が開始されるまでの流れについて、全体像を把握していきましょう。
- 令和3年10月1日:インボイスが発行可能な企業または個人の登録申請受付をスタート
- 申請書の提出完了後、「登録番号」の付与が行われる
- 令和5年3月31日:インボイスが発行可能な企業または個人の登録申請受付の最終日
- 令和5年10月1日:インボイス制度のスタート
なお、提出期限までに登録申請が行われなかった場合は、「提出した翌年の期首」になるまでインボイス制度を導入することができないので注意が必要です。
インボイス制度とは? 概要をおさらいしよう
この制度では、請求書を発行する際に「適格請求書=指定されている項目がすべて書き記されている資料=インボイス」の発行を行わなければいけません。
受取側は、指定されてた事柄がすべて書き記されている資料でなければ、仕入税額の控除を行うことができなくなります。
インボイス制度は消費税の仕入税額控除の新しい方式「適格請求書方式」を指す
インボイス制度は、別名「適格請求書方式」とも言います。請求書に載せなければいけない項目が決められていて、ひとつでも満たしていない場合は適格請求書として認められません。
インボイス(適格請求書)に載せることが必須な項目は、以下の通りです。
- 作成者の名前(屋号)または企業名
- 商品やサービスの提供が行われた年月日
- 取引された内容(購入した商品やサービス)
- 適用した税率(8% or 10%)
- 各税率の合算された金額(税込および税抜)
- 各税率の消費税だけの金額
- 購入者の名前(屋号)または企業名
- 登録番号
2023年から仕入税額控除を受けるためには適格請求書が必要
制度が始まる令和5年10月1日以降は、インボイスのある支払いのみ仕入税額の控除を行うことができます。
逆を言うと、インボイスではない請求書しか発行できない個人または企業から何か購入した場合、仕入税額の控除を行えなくなってしまうのです。つまり、最終的に支払う消費税額が増えてしまうことを意味します。
制度が導入された後は、現在の取引相手がインボイスの発行を行えるのかどうか、確認する必要が出てくるかもしれません。
適格請求書を発行するには登録して登録番号の交付を受ける
適格請求書を発行するためには、登録番号が必要です。
この番号は期限内に申請書を提出することによって、税務署長から通知されます。
登録番号は、以下のように法人と個人で異なります。
- 法人→T+法人番号
- 個人→T+13桁の数字
国税庁が、制度に登録されている企業または個人を検索できるサイトを公表しています。
13桁の数字を入力するだけで簡単にできるので、通知を受けた後、実際に登録が行われているか確認してみるのもいいでしょう。
インボイス制度の経過措置についてより詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
インボイス制度の登録申請に必要な書類・申請の手続きとポイント
この制度を導入するためには、事前に登録申請を行う必要があります。
登録申請することを考えているのであれば、まずは必要な書類から集めてみるのはいかがでしょうか。
この章では、必要書類と手続き時のポイントを紹介していきます。
登録申請に必要な書類
登録申請に必要な書類は、「申請書」「本人確認書類」のみです。「個人事業主」と「法人」では記入する内容が異なってくるので、間違えないように注意しましょう。
また、今まで消費税を納めていなかった事業者が提出するのはもちろんですが、消費税を納めていた事業者も同じく提出しなければいけません。
なお、期限内に提出を行えば、消費税を納めていなかった事業者は「消費税課税事業者選択届出書」の提出については免除されます。ただし、免税事業者もインボイスに登録すれば課税事業者となり、消費税の申告を行わなければなりません。
登録申請方法には紙による登録申請とe-Taxによる登録申請がある
登録申請方法には、下記の2通りから選択することができます。
- 紙の申請書に必要事項を記入して、登録センターに郵送または管轄の税務署に持参して提出
- e-Taxを利用して、インターネット上から申請書に必要事項を入力して提出
紙による登録申請の方法:用紙をダウンロードして記載・提出
紙で登録申請を行う場合、まずは申請書をダウンロードしましょう。
国税庁のホームページに行くと、簡単に行うことができます。
ただし「国内事業者」「海外事業者」と2種類あるので、該当する方をダウンロードする様に注意が必要です。
申請書を印刷したら、必要事項を記入します。一度で申請が完了できるように、記入漏れや記入内容に誤りがないか必ずチェックしましょう。
最後に、登録センターに郵送すれば完了です。なお、管轄の税務署に持参しても受け付けてもらえます。
e-Taxによる登録申請の方法:ブラウザやスマホ等から登録申請
e-Taxを利用することで、インターネット上から提出することも可能です。
ただし、e-Taxから行うには「マイナンバーカード」を持っていることが必須条件なので注意しましょう。
なお、マイナンバーカードを持っていて初めて利用する場合、まずは利用者識別番号の発行を受ける必要があります。
該当ページまで進み、必要事項の入力を行って送信すれば完了です。
メールアドレスの登録を行っていれば、申請手続きが完了次第、登録データをメールで受け取ることができるので便利でしょう。
インボイス制度の登録申請書の記入・申請する際のポイント
申請書を記入・申請する際のポイントを確認していきます。
1枚目
- 「法人番号」の欄がありますが、個人事業主は記入する必要はありません。誤ってマイナンバー等を記入しないように気を付けましょう。
- 「事業者区分」をチェックする欄がありますが、ここで「免税事業者」を選択した場合は、2枚目の「登録確認欄」の記入が必要になるので注意してください。
2枚目
- 「免税事業者の確認」に2つ、チェックをする項目があります。
- もし制度が導入される令和5年10月1日からインボイス発行を可能にしたい場合は、上部のチェック欄にチェックを入れましょう。
- ここにチェックを入れた場合、「消費税課税事業者届出書」の提出は不要になります。
- 制度導入時からではなく、自分でインボイス発行のスタート日を指定した場合は、下部のチェック欄にチェックを入れましょう。
- ただしこちらを選択した場合は、「消費税課税事業者届出書」の提出も行わなくてはなりません。
インボイス制度に登録するとどうなるのか
実際に登録申請を行って登録が完了した後どうなるのか、2点お伝えします。
つい直接的に関係する消費税の支払いだけに目が行ってしまいますが、押さえておきたいポイントなので頭の片すみに入れておきましょう。
登録番号と事業者の情報が公表される
登録が完了すると、国税庁のホームページから「インボイスを発行できる事業者」として公表され、情報のダウンロードが可能になります。
ダウンロードすると確認できる情報は、「登録番号」「住所」「氏名・会社名」等です。
また、登録番号で検索を行うこともでき、検索すると「氏名・会社名」「登録年月日」「住所」「最終更新日」が表示されます。
適正な取引が行われているか税務調査が入ることも
制度がスタートすると、今まであまりなかった赤字企業への税務調査も考えられます。消費税についてのチェックを行えるからです。
税務調査が入った場合、支払先についてまず調べられるでしょう。そして戻った後に、税務署内で実際に登録申請が行われているかチェックをするはずです。
しかし適正な取引を行っていれば問題ないので、恐れる必要はありません。
売手側事業者がインボイス制度に登録しないとどうなるのか?
もし売手側が制度が導入された後も未登録の場合、どのような影響があるのでしょうか。買手側のメリット・デメリットという視点で考えた場合に起こりえる事態について、3つの可能性を考えていきます。
適格請求書が発行できず買手側事業者が仕入税額控除を受けられなくなる
売手側が制度に未登録であれば、適格請求書を発行することができません。
未登録の取引先から購入した場合、買手側は仕入税額の控除を受けることができなくなってしまいます。それはつまり、申告時に支払う消費税額が増えてしまうことを意味するので、買手側にとってはデメリットばかりが目立つでしょう。
また、現在は3万円未満の仕入については、帳簿の保存があれば仕入税額控除は認められています。しかし制度が導入された後は承認されないので、個々の支払金額が小さい取引にも注意が必要になるでしょう。
買手側がインボイス制度登録事業者との取引を優先するようになる可能性大
では買手側としてどんな対応策が取れるかといえば、登録が完了している取引先を探すことでしょう。
もし同じ商品・サービスを取り扱っているのであれば、登録されている取引先から購入すれば仕入税額の控除を受けることが可能なので、当然の行動であると言えます。
また、新規で取引先を探す場合でも、まずは登録されているかどうかを確認されるかもしれません。買手側の立場で考えると、登録している取引先を優先することになる可能性が大きいでしょう。
結果として取引先が減ってしまう懸念がある
売手側が制度に未登録だとインボイスの発行がそもそもできないので、インボイスではない請求書を受け取った取引先は仕入税額の控除ができません。
そうなると支払う消費税額が増えてしまうので、取引先としては登録済みの事業者を探し、そして優先して取引を行っていくことになるでしょう。
その結果、もし仮にあなたが未登録の事業者だとしたら、取引先が減ってしまう懸念が出てきます。
買手は新規の取引先を探し出すことはできても、売手としては新規の取引先を見つけるのは難しくなるのではないでしょうか。
インボイス制度の影響についてより詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
>>インボイス制度が事業者に与える影響について事業者別に解説
インボイス制度にあたって登録の他に必要な準備
ここまでは制度導入までのスケジュール、登録時のポイント、売手側が未登録である場合の懸念点等についてお伝えしてきました。
この章では登録以外に行うべき準備について、売手側と買手側の両方の立場で紹介していきます。
売手側事業者に必要な準備
売手側としては大きく3つあり、「記載事項の変化に伴う請求書の様式変更」「社内での資料作成と保存に関する業務フローの確認」「取引先への報告」です。
それぞれ行うべきことを詳しく確認していきましょう。
適合する請求書様式への変更
インボイスとして認められる資料にするため、現在よりも記載する事項が増えます。そのため、今使っている資料の様式を変更しなければいけません。
社内での確認のしやすさはもちろんですが、取引先にもわかりやすい形式にしていくのがいいでしょう。
現在のまま使えるところ、そして改善すべき点の両方について、まずチェックを行います。
請求書発行・保存に関するフローの確認と見直し
現状と様式の変更が伴うので、制度スタート直後に戸惑わないように作成手順を見直しておきましょう。誰でもすぐに確認できるように、簡単なマニュアルを作成しておくのも良いかもしれません。
また、今までは発行した請求書の保存義務はありませんでしたが、制度導入後はインボイスの写しを7年間保存しておく義務が生じます。これは大きな変更なので必ず覚えておきましょう。保存方法は紙でも電子データでも構わないので、自社に合った方法を選んでください。
取引先へインボイス制度登録を報告
取引先に対して、登録が完了していることを報告します。特に買手である取引先には、漏れることなく伝えておいた方がいいでしょう。今まで通り仕入税額の控除ができることがわかれば、引き続き安心して取引を行ってくれるはずです。
国税庁のホームページで登録している事業者の検索が可能なので、あなたの登録番号を取引先に伝えるのもいいかもしれません。言葉だけではなく、実際に登録済みであることを確かめてもらった方が信用してもらえるからです。
買手側事業者に必要な準備
買手側としては大きく2つあり、「購入している取引先が登録済かどうかの確認」「受けとった資料をどう保存していくかという社内業務フローの確認」です。
それぞれついて、詳しく確認していきましょう。
取引先のインボイス発行状況の確認
もしあなたが買手側としての立場であれば、購入している取引先の登録状況を必ず確認しておきましょう。繰り返しになりますが、インボイスの発行ができない取引先から購入すると、その分は仕入税額の控除ができなくなってしまうからです。結果として、申告時に消費税の支払額が増えてしまいます。
もし未登録であれば、登録済みである新規取引先を探してみましょう。または取引の継続を希望していることを先方に伝え、登録を促してみるのもいいかもしれません。
請求書の受け取り・保存に関するフローの確認と見直し
現在でも請求書の保存は義務付けられていますが、新制度が始まっても変わりません。同じく7年間、請求書を保存しておく必要があります。
さらに注意が必要なのは、電子データで保存しておく場合、電子帳簿保存法に準じているツールを採用しなければならない点です。基準を満たしていないと、仕入税額を控除することが認められません。もし現時点で準備できていない場合は、業務フローとツールの見直しを行いましょう。
おすすめなのは、oneplatのようにインボイス制度に対応済みであるツールを導入することで、効率よく新制度に移行していくことです。
【まとめ】 正しい知識を押さえて、インボイス制度の登録をしよう
インボイス制度が始まることで、誰しも影響が出てきます。それは個人でも法人でも、事業を行っている限り、買手側としても売手側としても取引先とのやり取りが発生するからです。
概要を抑え、そして登録した場合と未登録にした場合、それぞれどのような影響が及んでくるのかを一度考える時間を持ちましょう。
そしてもし登録が必要であると判断したならば、早めに対応していくことをおすすめします。